アルキヘンロズカン 感想

アルキヘンロズカン   作 しまたけひと

 同人誌として販売されていたものが出版社のお眼鏡にかなったのか、市販の単行本として出版されることになった、四国遍路を題材とした漫画の「アルキヘンロズカン」の感想を書いていきます。
 作者は「しまたけひと」と言う人ですが、いくつかのペンネームがあります。「ごくつぶし」とかでしたっけ?wikipedia見ると、案外活動期間が長いんですね。名前は知っていたけれども、デビュー年は知らなんだ。

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上巻
 一応主人公は、売れない男性漫画家と会社辞めて1年の女性の二人です。漫画家のほうはそのまま作者を投影したようなもの。ですので悩みの描写も多いです。女性は冷めている感じで、性格は男性漫画家と大して変わりません。男性漫画家の描写だけだとおそらくクドくなるだろうから、こういう構成のほうが良いですね!(失礼)
 
 作画は筆ペン(?)を主に使用しています。黒田硫黄さんっぽい雰囲気ですが、以前見たときは桜井のりおとかガビョ布のような感じだったような…。
 「55歳の地図」もそうでしたが、歩き遍路では1日の多くの時間を外で過ごすためか、やはり風景の描写が普通の漫画よりも多めですね。実際お遍路中に見て感じる風景は雄大ですから、そこで出会う人々も含めて、「世界は広い!」と感じられると思います。

 納経所の態度に関する話が出てきますが、皆さんちょっと不満に思うときもあるのでしょうか。この漫画にも出てきましたし、他のネット上でのお遍路日記にも出てきました。私は別にそんなことは感じませんでしたが。納経所は忙しそうにしているときが多かったし。
 個人的に、納経所に向かって「真面目に働け」って言うことは筋違いだと思います。まあこの漫画にも「納経所の人たちは字が上手いだけの雇われ人だから」という理由も登場しますが、それだけでなく、多くのお遍路さんは敬虔な仏教徒ではないのにも関わらず周らせてもらってるのだから、自分が真面目ではないのに相手に真面目を要求するのは駄目だと思うんですよ。お遍路側は300円払っていますが、じゃあそれでお客様の面が出来るかって、そうじゃないですよね。というかどの寺でもいつ行ってもご朱印もらえる(営業時間内なら)ってのは、現在全国一の宮のご朱印集めてる私にとっては恵まれていると思いますよ。
 納経帳に書かれる文字がものすごく神聖なものだと思っている人にとっては、文字を書く人が特別凄い人ではないことにショックを受けるかもしれません。でも大事なのは、あの文字とご朱印よりも、「参拝した」という事実が大事なんじゃないですか?でも見ず知らずの人によるフルコンプの納経帳が高く売れるってこともありますから、そこんとこの価値観は人それぞれですかね。

IMGP5009.jpg 上巻では男性漫画家の悩みに関することが多く登場します。パッと見、「そんなに人の評価とか人と同じこととか売れることとかが大事か?」とは思うんですけど、でも10年以上活動しても浮き上がる気配がないとかそういう状況なら、浮世離れしていそうな「漫画家」というものでもこういうことは思うんでしょうね。まだ活動期間がごく短いなら「漫画家舐めてんの?」と言えるかもしれませんが。(またまた失礼)
 芸術系の仕事などは「好きだからやれる」という部分が多大にありますが、人間の心はずっと変化しないものではありません。なので好きだった漫画が嫌いになることもあるでしょう。そういう場合、他の人たちはどうしているのでしょう?別ジャンル(漫画家なら原作など)に移ってみる?全く違う仕事を始めてみる?そのまま続ける?

 でも個人的には、ロリ漫画を描いていたことを卑下しないでは欲しいね!


下巻
 オムニバス方式ですし描いているこもそれぞれ違うから、書こうと思えば1話1話感想を書けます。でも全部書くのはしんどいので、やっぱり一部だけ書きます。

 四国遍路では88の寺を巡るのですが、どうして88なのか、88以外の寺は四国遍路とは関係ないのかとか、そういうのは実は曖昧です。お遍路文化が始まってからずーっと四国遍路は変わっていない、というわけではなくて、廃仏毀釈など時代の変化で少しずつ変わっています。
 そんないい加減な部分もあるから、「本当にこれが正しいの?本当にご利益あるの?」と思うかもしれません。しかし私が思うに四国遍路がすごいのは、誰にでもその機会を与えられ、いつでもやってよく、かなり整備された巡礼システムであることそのものだからなんです。ある何かをやれば絶対に救われる・報われるだなんて、文明開化以降の日本ではそんなことを思う人は少なくなったでしょう。でも寺や神社や宗教は無くならない。その理由は、その文化や習慣の美しさとか良さとかだと思うのです。そういう意味で、四国遍路は価値があると思うのです。
 つまるところ、お遍路さんは「お遍路」という機会そのものに感謝するべきだと私は思います。お遍路で得られるものは、お遍路すると分かる。するまで分からない。

 この漫画にはマナー違反の歩き遍路やセクハラオヤジに復讐することがありますが、あまりそういうのはしてほしくなかったな…。悪人が裁かれるってのは日常の中では清々することかもしれませんが、お遍路中だけでもせめて十善戒を守って、争いになるようなことはしないで欲しかった。争いになるようなことを始めたのは相手方であっても。
 この漫画は一応フィクションですが、一体どこからどこまでがフィクションなのかわからないときがあります。作者の体験と聴いた話を組み合わせたりしたようですが…。

 ラスト近くで罪を犯した画家が逮捕されることになりますが、そのエピソードは作者HPによると、罪を犯した人間が四国遍路中に俳句を書き残していたということが実際にあったそうです。漫画を読んだだけでは「このエピソードは必要?」と思ったのですが、近いことが実際にあったとなると、深みが増しますね。
IMGP5010.jpg よく漫画にも登場しますが、「四国は不思議な土地」だそうです。色んな人間を受け入れて、聖人君子でも無いのにお接待とかするから。う~ん、四国だから不思議なのか、四国遍路があるから不思議なのか。他の土地でも四国遍路のようなものがあれば「不思議」になるんじゃないの?とは思いますが、日本国内ではあまり聞いたことありません。本当に無いのか、目立たないだけか。でも名古屋二十一大師巡拝したときは、お寺からお菓子もらったりもしましたよ。
 というわけで個人的に、お遍路で「四国は素晴らしい!」とか「四国遍路は素晴らしい!」とか思っていただくのは四国民にとっては嬉しいことですが、それだけでなく、自分の生まれ育った土地とかについて振り返っていただきたいとも思うわけですよ。お遍路で何かを見えるようになったら、日常を再認識していただきたい。

以上、漫画そっちのけの感想記事でした…

テーマ : 漫画の感想 - ジャンル : アニメ・コミック

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