GOTH、ダズハント、夕凪の街桜の国 感想

 一巻で完結する漫画、3作品の感想を書きます。
 どれも短いながら綺麗にまとまっていてすんなり読めます。
 設定がこだわっているものもいいけど、たまにはこういうあっさりしたものもいいよね!

GOTH

 この漫画はかの有名な乙一さんの書いた小説、GOTHを漫画にしたものです漫画版を担当したのはNHKにようこそ!を描いた、大岩ケンヂさん。NHKにようこそ!ではコミカルなものとどことなく寂しい感じの描写が個人的には印象に残っていました。ですがこのGOTHでは、グロテスクな描写も上手でした。どのぐらいグロテスクかというと、始め見たとき少し吐き気がしたぐらいです。それほどのものですので、この漫画を読むのには少し覚悟をしておいたほうがいいかもしれません。

 ストーリーはと言うと、一話完結タイプで主人公たちが様々な事件に巻き込まれていくという、どこかで見たような進み方です、バーロー。まあ主人公二人が異常な事件を好み、それについて探求してしまうからなんですが。あとがきにも書いてある様に、乙一さんも「実に都合よく事件に巻き込まれてしまう。全くアホなんじゃないかと思う。」と書いてある。まあフィクションだからいいじゃないですか!
 とりあえず進み方は、主人公たちが異常な事件を嗅ぎ付け、事件に巻き込まれて危なくなりながらも事件を解決していくという感じです。どの話も異常なものばかりで読者を飽きさせません。手首を集めるもの、解剖をするもの、人を地中に埋めたがるものなど、人を殺したいから殺したなどという一般的な事件とはかけ離れた異常なものばかりです。ですがやはり読んで面白いと感じてしまう。そんなのを特に「面白い」と感じてしまうのが主人公二人なのでしょう。
  
 事件も面白いのですが、主人公二人の森野と神山の関係も面白いと思います。神山は森野に会ったとき「殺してみたい」と思うほどの異常者です。ですが彼は異常者に殺されそうになる森野を助けます。そして森野は異常な事件を調べている人なんですが、彼女にはある過去をもっているだけでまだ正常なほうだと思います。後、エロい。
 彼らはなんやかんやで意気投合し、異常な事件を一緒に調べていきます。神山は森野を殺したいと思っていながら彼女に手をかけることはありませんでした。


奇妙な関係

 このコマにあるように、彼らはお互いに若干好意を持っていても恋愛感情は無く、しかし信頼しているように見えます。彼らの関係は本当に奇妙なものですが、彼らが普通の人間とは違うからこんななんとも言えない関係になったんでしょうか。


 ただ異常な事件を読んでいくのではなく、それに関わる人間の気持ちを読み解いていくのも面白いかもしれませんね。




ダズハント

 ダズハントは以前このblogで記事を書いた、マンホールを描いた筒井哲也さんの作品です。この作品はウェブコミックで、作者さんのHPに行けば無料で読むことが出来ます。ですがその後スクエニから単行本で発売されています。どちらで読むかは人の自由ですが、個人的にはやっぱりページを手でめくりながら読むのが性にあっているとは思います。あと、マンガ本には多重夢というショートストーリーも載っています。

 いきなりネタバレですが、マンホールでは犯罪者への断罪がテーマに含まれていましたが、ダズハントも同じように犯罪者をどうするかというテーマが含まれています。ダズハントとは不発弾処理という意味で、言い換えれば出来損ないを処理することです。
 「ダズハント」というゲームは、そのゲームに登録したもの同士でマーキーというものを奪い合いそれを取れば取るほど金が振り込まれるというシステムになっています。マーキーを取るには基本的に何をしてもよく、他人を殺して奪っても問題はありません。
 そのダズハントというゲームを作ったのはある少女で、彼女は過去に父親がチンピラに暴行されて後遺症を負い、家族に迷惑をかけると言う理由で父親が自殺してしまうということがありました。そのために彼女は潜在的に危険な人物をダズハントに誘い、その中で殺し合いをさせてずっと勝っているものはエクストラゲームで全員殺すというシステムを作り上げました。

提起

 この作品にあるのは読者に対する作者の問題提起です。このようにして犯罪者、犯罪者予備軍を社会から排除してよいのだろうか?という実際にやろうとすれば人権団体がギャーギャー騒ぎそうなテーマです。しかしこのシステムは必ずしも悪いともいえないし良いとも言えないものです。そのような難しい問題に作者さんは問題提起しているのです。つまり何が大事かと言うと、この作品を読んで読者がどう思うかということです。ただこのシステムを受け入れたり受け入れないと判断するのではなく、じっくりと考えてみるべきだと思います。そうすることがよりよき社会に繋がるのではないかと私は考えます。
 個人的には、このゲームで参加者以外を傷つけず、このゲームの目的が絶対にばらされない、初めてでどのようなものか分からずに殺されたり後遺症を負ったりしないのであれば実際にあっても賛成です。正直私も野蛮な人は大嫌いですし、そんな人はどこかで強制労働されろと思います。そんなことを主張する私も野蛮ですが、私の意見はこんなものです。


 では次に、ショートストーリーの多重夢について感想

個の多様

 この話のストーリーは、ある多重人格の少女が義理の父親を殺してしまったときの話で、多くの人格が出て来ると同時に絵柄も人格と同様にころころ変わっていきます。その話の不気味さもさることながら、いろんな絵柄をかける作者さんに驚きます。漫画らしい絵や、超リアルな絵、幼女が描いたような絵などをフルカラーで見せてくれます。
 ダズハントのような作者の問題提起はあまり感じられないのですが、読んだ後はなんともいえない不気味な気持ちになることうけあいです。



夕凪の街 桜の国

 確かどこかの漫画レビューサイトで紹介されたのが読むきっかけでした。とにかく読めというようなレビューの仕方でしたがなんとなく興味を持ったので買ってみました。うむ、確かに素晴らしい!後になってこの漫画の評価を調べてみると、なんと文部科学省から賞を受け、他の色々な雑誌にも絶賛されています。しかもwikipediaを見るといろんな国の言葉に翻訳されているそうです。そこまでのものだったのか・・・

 この漫画は原爆を題材としていますが、これ系にありがちな原爆はだめだ!戦争はだめだ!と、声高に主張することはありません。ただ原爆後の人々の生活を描き、原爆という惨事が彼らの心や状況を変えるきっかけになったというぐらいのもです。私はもう戦争ものにはお腹一杯だったのですが、この漫画はまた別の視点から戦争や原爆を描いたものなので興味をもって読むことが出来ました。
 戦争は悲惨なものなので、それに関係する作品は大抵が悲惨さを訴えるようなものばかりだったのでこの作品のような、話の裏に戦争があってそのことが人々の心へ与える影響というものをしみじみとした感じで描写したので、この漫画は評価を受けているのでしょうか。少なくとも私はそこを評価します。

 
 最初の話、夕凪の街の最後に皆実の台詞にはこんなことがありました。

 十年経ったけど原爆を落とした人は私を見て
 「やった!また一人殺せた」とちゃんとおもってくれとる?



 私はこのような考え方に人生で初めて出会いました。戦争で人が死ぬときは大抵、死にたくないとか戦争なんて起こらなければ良かったなどの気持ちで死んでいくと他の戦争作品で描かれていました。しかしこの作品はこれまでの戦争作品とは異色のものでした。
 皆実は多分、「私の死は無駄死にじゃないよね?」と言いたかったのでしょう。アメリカ軍は原爆を落として10万人以上の民間人を殺しましたが、そのときちゃんと彼らは殺そうと思って広島、長崎の人々を殺したのでしょうか?単に戦争に勝つため、原爆の実験のために人が死んでいくのはあまりにもかわいそうです。アメリカ軍はそのような人々に対して「責任をもって私たちはあなた方を殺した」と胸をはって言えるのでしょうか?
 皆実の台詞は100%原爆を落とした人々を非難しているというわけではありません。ただ彼女は自分の死が誰の意図でもないと考えたくなかったのでしょう。だから彼女は自分は殺されたと思いたかったのでしょうか。

 次の話は桜の国と言って、夕凪の街の続きに当たる話です。
 主人公は皆実の弟の娘、七波です。彼女はすでに被爆した世代の一つ上で、原爆症を発症する恐れはほとんどありません。しかしやはり彼女にも原爆の影が付きまとうのです。彼女の母はおそらく原爆症で死にました。おばあさんも。
 少々分かりにくかったので私なりの解釈ですが、七波は自分は原爆のおかげでいつ死ぬのかわからない人間だと思いたくなかったので、母と祖母の死んだ故郷を忘れるべきだと思っていたのではないでしょうか。

しかし・・・

桜の国

 七波は母の生き様を思い出し、こんな原爆症だと思われそうな生まれでもこの両親の下で生まれてきたことを幸せに思っています。この両親の下で誰かに何か思われていようとも、彼女は両親を恨むことなく、この両親を選んで生まれてきたと言う事が出来ました。


 本当にこの物語は美しかったです。戦争後の世界を生きる人の繋がりというものを感じ取れたと思います。まあもちろんそれ以外のテーマもあると思いますが。
 この作品は新たな種類の戦争漫画(?)として多くの人に読まれるべきだと思います。


最後に・・・妻を失ったのは可哀想だが、あんなかわいい妻を娶った旭が羨ましすぎる・・・!

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テーマ : 漫画の感想 - ジャンル : アニメ・コミック

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